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東京一極集中がもたらすこと

2019.04.26 12:09

政治家と結婚して、はたまた自身も政治に飛び込んで何を、と言われることを承知で言うなら、私の理想の生活は、静かで質素な暮らし。
静かな家で、家族に囲まれ、身近に手に入るものの範囲で、裏庭で少しずつ花やら野菜を植えて、子どもと植物の成長を楽しみながら暮らしたい。
お世話になっている方々のお宅にお邪魔すると、こうした生活を実践している方が多く、静かな暮らしの佇まいに心が安らぐ。

しかし、その一方で、車であちこち走っていると、人の気配のない家や空き家が目につく。

先日のニュースで、4月1日現在の秋田の人口は97万702人と発表され、前月に比べて4488人減少したことが明らかになった。
この一年で県人口は約1万4千人減少している。
この減少の半分以上は、死亡者多数による自然減だが、主に若者が、この4月に秋田を離れ都会に向かう「社会減」も大きな要因となっている。
人口減少には全く歯止めがかかっておらず、その減少率は、全国で最も高い。

「日々不安にかられながら成功を追求するより、静かで簡素な生活のほうが多くの喜びをもたらす」

本で目にした一文だが、本当にそうだと思う。少なくとも私にはそちらのほうが合っていると感じる。

それを解っていながら、喧騒漂う政治の世界に飛び込もうと決心したのは何故か。それは、大多数の人のこうした静かな暮らしが、年々脅かされるようになったと感じるからだ。

人口減少と高齢化は、加速度を増して秋田を飲み込んでいる。田舎に行けばいくほど手のかけられていない空き家や壊れかけた家が目立つ。

祖母が暮らしていた家も、何年も空き家になった末、去年取り壊された。私の原風景とも言える祖父母宅の庭。夏休みの1ヶ月、虫を取り、セミの孵化を眺め、日がな一日遊んで過ごした庭はなくなってしまった。
とても残念だが、認知症になりグループホームにいる祖母や、両脚が人工股関節で杖を使っている母、千葉にいる叔父夫婦はもちろん、今まで手入れをしてくれていた親戚も定期的な通院が必要になり、この先、誰かが住む具体的な予定もない祖母の家を維持するのは難しくなったからだ。
先日偶然その場所を通りがかった時には、本当に心が締め付けられた。祖父が手塩にかけて文字通り慈しんだ木々も緑も、もうない。

こうしたことは、我が家だけではないだろう。18歳で秋田を出て、そのまま戻ってこない。東京で家庭をもち「子育ては秋田がいいな」そう思っても、そう簡単に戻ってこられない。
継ぐ家業があったとしても、人口減少と高齢化が加速度を増す秋田で、それが持続可能なものかどうか悩むことは多い。
農業だけで食べていくのも難しい。全県をあちこち歩いていると、中小の小さな事業所や商店がまだまだある。しかし、国道沿いに並ぶのは、何処も同じチェーン系大型店ばかりで、どこの街にいるのかわからないほど同じような風景が広がっている。
戦後の政府が目指してきた「地方の均衡ある発展」の行き着いた先がこれなのかと悲しくなる。

一方で、狭いマンションやアパートに住み、あるいは通勤に片道1〜2時間かけて都心の会社に通う都会の生活が豊かだとも決して思えない。
平日は仕事しかする余裕がなく、休日はそのための準備の時間であるような生活。たまにどこかに出かけようと思っても渋滞や混雑ばかり。
子どもを産めば保育園が見つからず、女性は仕事を続けられるかどうか脅かされる。それ故に出生率がとてつもなく低い。こんな都会の暮らしが豊かだと、誰が思えるだろうか。

色々な今までの仕組みが限界に来ている。経済・会社が全てに優先され、個人の楽しみや生活は二の次にされてきたこれまでのやり方に、多くの人たちが疑問を持っているのに、過去の成功体験や前例にいまだ囚われている。
そして、変わらない社会の仕組みに誰もが違和感を覚え、ストレスを感じ、そのしわ寄せが弱い立場にある人たちにきている。そう感じる。

結局、東京一極集中は誰も幸せにしない。

地方創生が叫ばれて、多額の予算を使い、特区だ何だと仕組みの変更を行ってきた。
それでも、東京の一極集中の流れは止まらない。
地方は努力を重ねても、せっせせっせと都会に若者を送り出す。

小手先の政策では全く歯が立たないということははっきりした。
それでもこの地域の疲弊の深刻さを政府が実感しているようには思えないのだ。

もっともっと秋田の今を伝える必要を感じる。
秋田は東京と一緒ではないし、全国平均で語るのは誤っている。
そして、この太く強い東京一極集中の流れを変えるには、かなり大胆な施策が必要だろうと思う。
そのための方策をみんなが自分ごととして知恵を絞っていかなくてはいけないし、それを後押しする政治、行政が求められている。
都会から不公平だと言われようと、構造的に流れを変える大胆な姿勢が必要ではないか。

最初は小さな声かもしれないが、しっかりと声をあげていきたい。

写真は自然豊かな秋田市千秋公園にて。


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