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見直される家族農業の価値

2023.06.13 13:58

毎週末、県内のいずれかの市町村で「しずかと語る会」を開催しておりますが、農家の皆様からも、様々なご要望やご意見を頂いています。また、昨日は畜産農家を視察させていただくと共に、県営農集団協議会総会・懇談会にも出席をさせて頂き、県内各地で農業を営む皆様から日頃思われていることや水田活用交付金などについてご意見を頂戴して参りました。

この季節に県内各地に足を運び改めて感じるのは、中山間の隅々まで農業の営みがあること。多くの方々が厳しい状況の中でも、先祖代々の土地に強い想いをもって中山間で農業を営み、里山と人里の境界を守り、地域社会の維持にご尽力いただいていることが感じられ、感謝の気持ちでいっぱいになります。

昨夏に農林水産委員会に所属して以来、13回の質疑に立ちましたが、そこで農水省の皆さんと議論をする中、何度も聞かれたのが「効率的かつ安定的」という言葉。それは多くの場合、農地の集約と大規模化を指しています。ただ、秋田では、この「効率的」な農業とは相入れない中山間も多く、そこで多様な農業を営む方々を知る私としては違和感があり、いわば大規模化だけを推し進めるような今のあり方は見直すべきではと訴えてきました。

こうした私自身の考えは決して突飛なものではなく、世界的には地域社会の維持、土地やエネルギー効率性、国土・生物多様性の保全など持続可能性に重要な役割を果たす小規模・家族農業の価値が見直されています。

国連は、家族農業を農業政策の中心に据えるべきだとして2019年からの10年間を「家族農業の10年」として啓発活動を行なっており、日本もその共同提案国となっています。この国連の提案を推し進める家族農林漁業プラットフォームジャパンのHPには、その背景などについて以下のように記されています。

「これまで、先進国・途上国を問わず、小規模・家族農業は「時代遅れ」「非効率」「儲からない」と評価され、政策的に支援すべきは「効率的」で「儲かる」「近代的企業農業」とされてきましたが、ここにきて農業の効率性を測る尺度自体が変化しています。農業の効率性は、労働生産性のみで測れるものではなく、土地生産性は大規模経営よりも小規模経営で高いことが知られています。特に今、重要視されているのがエネルギー効率性で、化石燃料等の農場外部の資源への依存度が低い小規模・家族農業の隠れた効率性が注目されています」

また、日本農業新聞によると、欧米では、気候変動や生物多様性、農村の過疎化などを背景に、小規模な農業・農村を再評価する流れがあるとのこと。自給率の高いヨーロッパの国々ではもちろんのこと、大規模農業一辺倒に見える米国ですら、「真のコストを考慮した場合、大規模農場は小規模農場よりも効率的に農産物を生産しない」と指摘。災害時の食料安全保障の危険性や長距離輸送に伴う化石燃料消費の増大など問題点を提起しています。また、韓国は、農業の多面的機能を守るため0・5ヘクタール以下の小規模農家に対し直接支払いを行う法改正を行い、直接支払いは、法施行前の131億円から539億円となり、4倍以上拡大したとのこと。

安いから肥料や飼料などを海外から二酸化炭素を排出しながら運んでくるー。今、農業や酪農・畜産業などが苦しくなっているのは、経済性を最重視して海外に依存してきたことが原因となっています。私がお話を聞いたしいたけ栽培をしている農家は、温度の維持管理のために灯油を使ってる規模の大きいところはコストに見合わないからと栽培を断念した一方で、薪を使ってやっているところは変わらず生産ができています。遥か遠い海外から運ばれてくる石油を使った農業と、裏山の薪を使用した農業。エネルギー効率のみならず、価格変動に左右されず安定的に確保できるものを用いていること、しかも環境に優しい農業がどちらかなのかは明白で、こうした家族農業を支援することこそが持続可能な農業をつくっていくとの指摘に、これこそが国がしっかりと支えていくべき農業のあり方だと感じています。

秋田も含め、日本は国土の7割が中山間地域で、農業経営体の9割以上を家族農業が占めます。国も中山間地域等直接支払制度などで支援していますが、農家の皆さんに聞くとまだまだ農家の皆さんの手元に届いていません。昨日お話を伺った方も、「草刈りなども、以前は一日やれば3〜5千円ぐらい出たものだったが、今はなくなったので、余裕もない中、農地に木を生やしたりしまっている」とのこと。

食料・農業・農村基本法の改正に向け議論が行われている最中、日本でも規模拡大や経済最優先の農業政策から転換し、地域を支える中小・家族農業の価値を再評価し、それを政策に落とし込んでいけるよう農水委員会の委員の先生方のお力もお借りしながら頑張りたいと思います。

県内各地を回り、地元の空気を深呼吸し、改めて今国会で声を上げてきたことは間違ってなかったなと感じました。農業のことに限らず、皆さまが日々感じていることを語り合い、今後の国会活動の糧にすべく、来週以降も足を運びたいと思います。

<語る会、今週末以降の日程>

6/17(土)

午前10時 井川町 井川町公民館

午後 1時 大潟村 村民センター

午後 3時 男鹿市 ハートピア

6/18(日)

午前10時 東成瀬村 地域交流センターゆるるん

午後 1時 湯沢市 湯沢ロイヤルホテル

午後 3時 羽後町 活性化センター

6/24(土)

午前10時 仙北市 樺細工伝承館

午後 2時 美郷町 住民活動センター

6/25(日)

午前10時 にかほ市 象潟公民館

午後 1時 由利本荘市 アクアパル

午後 3時 秋田市 アルヴェ ※

7/1(土)

午前10時 大仙市 はなびアム

午後 2時 横手市 かまくら館 ※

※の会場には手話通訳があります。


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