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性犯罪被害の実情と日本版DBS

2024.03.14 14:29

先週、性暴力犯罪被害者支援を行う団体「Spring」の皆さんらから、性犯罪被害に関すること、今国会に提出が予定されている「日本版DBS」に関する要請を受け、意見交換をさせて頂きました。

昨年、性犯罪に係る刑法が国会で審議され、同意していない性行為が犯罪であると明文化、性交同意年齢も13歳から16歳に引き上げられ、時効も延長されるなど、被害実態に寄り添った大幅な改正が行われました。

ただ、子どもの頃にあった被害を被害だと認知するのに数十年の時間を要すること、自身の子育てをする中でフラッシュバックが起こり被害に遭った記憶が蘇るケースが指摘されています。被害そのものを認知し訴えることがどれほど難しいものかということを鑑み、性犯罪については時効自体を廃止している国がある中で、日本のそれは前回改正をもってしても十分とはいえない現状があります。

また、子どもの性被害を予防するため、子どもと関わる職業に就こうとする人に性犯罪歴がないことの証明を求められるようにする「日本版DBS」についても、現状検討されている案では、法律や条例違反で実際に処罰された人のみが対象となり、示談となったケースなどについては対象外となることがわかり、学校で懲戒処分で終えたケースなどは含まれないこととなっており、子どもを守る仕組みとしては不十分であることが指摘されています。私自身も過去に示談にした性犯罪の経験があること、また、子どもの将来などを考え、裁判になることなどを避ける傾向がある日本では、このようなケースが対象外となることで、新たな犯罪を招く恐れがあると強く危惧しています。

イギリスの包括的なDBSでは、子どもだけではなく、ご高齢の方や障がいを持つ方など、被害に遭っても申告が難しい可能性がある社会的弱者全体を対象としています。数段階に分けたクリアランス基準を設けており、街頭インタビューなどで子どもと接する可能性がある報道機関の記者職の方などにも過去に暴力関係の犯歴がないことの証明を求める規定などを適用していること、自分の子どもの学校に出入りする保護者を含めたボランティアなどにも適用していること、子どもの安全を確保するため、犯罪が成立しなかったケースでも、子どもや弱者に関する不適切な行動がデータベースとして照会できるよう設計されています。そして、このような制度は、ヨーロッパなどの他の国々でも採用されています。

DBSの議論の際に最も議論となるのは、職業選択の自由との兼ね合いです。もちろん、憲法で保障された職業選択の自由は尊いものです。それを考慮した上で、社会としてより保護するべきはどちらの権益であるのか、という価値判断が必要となります。私自身は、子ども達が受ける被害の影響が重大であること、こと「子どもと関わる職業」以外については就業の制限はないことから、DBSの導入は不可欠であり、日本も、どちらがより脆弱で社会として保護すべきだと考えているのか、G7の一角をなす先進国の一つとして価値判断をするべき時が来ていると考えます。

先日、自衛隊での性犯罪被害を告発した五ノ井里奈さんが、アメリカ政府から「世界の勇気ある女性賞」を授与され、ホワイトハウスにて表彰が行われたばかりです。

自衛隊という序列のある組織の中で、声を上げることはどれだけ勇気が必要だったことでしょう。その勇気が海外からもこのように認知され、エンパワメントされるのは、同じ女性としてとても励まされることですし、こうした被害の実情に合わせた社会の変化が立ち遅れてきたのは、つまるところ女性議員が少ないからだと、国際女性デーを経て痛切に感じています。

性犯罪は声を挙げるのが難しいのは事実。被害者が男性である場合には、より被害を訴えることが難しいということもデータから明らかになっています。でも、性被害は被害者に落ち度があるのでも、恥ずかしいことなのでもなく、本来、恥ずかしく許されないのは、加害行為に及んだ側のほうです。このような認識が広まるよう、そして、One is too many(性犯罪はひとつでも多すぎる)、将来起こりうる被害を一つでも防ぐことできるよう勇気を振り絞って声をあげる皆さんと共に、声なき声にも耳を澄ましながら、これからも社会を公正なものに変える努力を続けていきます。


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