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認知症と介護の安心を

2024.09.20 12:28

先月、秋田県介護福祉士会の中央支部設立総会記念シンポジウムにてファシリテーターを務めさせていただきました。テーマは「秋田の介護をどう思うか」。

そこでお話ししたのは二人の祖母のこと。

30年以上前のことになりますが、父方の祖父母と一時期生活を共にしました。当時既に認知症が始まっていた祖母は、住みなれた家から我が家に来ることになった環境の変化もよくなかったのだと思いますが、「小人が窓から入ってくる」と言っていました。怯える祖母の様子を見て、確かにわからないものが家の中に入ってきたら怖いだろうと、祖母には見えている現実を否定せずに応じていた母。母の共感的な接し方が功を奏したのか、次第に物取られ妄想なども軽くなっていきました。

現実にないものが見える「幻視」などが特徴的な症状とされる「レビー小体型認知症」という言葉が知られるようになったのはそれから十数年後のこと。何の知識もない中で母は頑張ったと感じますが、今でも母は、祖母への対応を悔やんでいて、「レビー小体型認知症をあの頃知っていたらもっと色々してあげられたことがあったかもしれない」とニュースなどを見るたびに話しています。

もう一人の祖母は母にとっての実母である祖母。気分屋で家出をしたりとなかなか直情径行型の祖母で、母はそんな祖母に代わって、近所の方にお世話になりながら、弟の世話をしていたとのこと。そんな過去もあり、実母に対して優しくなれない母。認知症となり、生来のワガママに磨きがかかる祖母に対し、「母さん、そんな言い方するもんでね」と強く言う場面もありました。私自身も、短期間ではありますが、祖母との生活の中で、どのような接し方がいいのかと悩んできました。「いつ結婚するんだ?」などと同じ質問をなん度も繰り返されれば応えるのも疲れてしまいます。母と祖母の関係を見ていて、血の繋がりがあるほうが互いに遠慮がないから大変、とも。2人の祖母と自分、祖母と母、祖母と私の夫などとの関係性を見つめる中で、認知症の方とそのご家族、ケアにあたる方々のご苦労や葛藤はいかばかりかと思います。

明日9月21日は認知症の日。第一次ベビーブーム世代が「後期高齢者」とされる75歳を迎えるのにあたり、日本では急速に高齢化が進展し認知症の方が増加しています。2022年の認知症の高齢者数は約443万人、軽度認知障害の高齢者数は約559万人と推計され、合計すると約一千万人。高齢者の約3.6人に1人が認知症又はその予備軍と推定されます。そんななか、ようやく認知症に関する初めての法律である「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が今年一月に施行されました。認知症の方が尊厳を保ちながら希望を持って暮らすことができるよう国や自治体の責務が定められています。計画の策定や施策の推進について、「認知症の方を含めた一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進する」とされています。この目的に向けて、認知症施策を国や地方自治体が講じていくことになります。

全国でもトップの高齢化県である秋田に暮らす私たちにとっては、せめて10年前にやっておいてほしかったと思われるようなものでもあります。県内では、若年性の認知症に関する勉強会なども開かれるようになり、認知症に関する理解を深める機会は増えてきています。

認知症の方が暮らしやすい社会は、認知症ではない方にとっても安心して暮らせる社会。

来年には親世代の全員が後期高齢者となる私にとっても、待ったなしの課題です。

秋田においては多くの方の日々切実な課題となっている認知症対策がしっかりと進んでいくように、当事者やご家族、支援者の方々からお声を聴きながら、共に社会ができる工夫や備えについて考えていきたいと思います。

写真は冒頭のシンポジウムの様子。

介護に携わる皆さまのお話が聞けて大変勉強になりました。貴重な機会を有難うございました!


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