2025.12.11 15:19

先日の参議院環境委員会にて、今年度、秋田県をはじめ全国で深刻化している「クマ被害」の実態について、石原環境大臣および政府へ質疑を行いました。
夏の改選を経て、農林水産委員会から環境委員会に所属が変わりました。農林水産委員会でもクマ問題を取り上げてきましたが、農水委で扱えるクマ問題はどうしても農作物被害と農作業中の人身被害に限られてしまうので、今年のような街中での大量出没や人身被害のことを中心的に議論することができませんでした。そのため、環境委員会に戻り、直接の所管である環境省と、いま直面する危機的な状況への対処はもちろん、住み分けのための中長期的な議論まで、しっかり関与していきたいと思うようになりました。
■「どこでも、誰でも」襲われる恐怖
秋田県は少子高齢化のトップランナーであり、自らを「課題先進県」と呼んでいます。今、秋田で起きているクマ被害は、クマの生息しているところであればこれから全国で起こりうることでもあります。
今年度、秋田県内の被害は過去最悪レベルで推移しており、県は「いつでも、どこでも、誰でもクマに遭うおそれがある」として、最高レベルの注意報を発令しました。
被害のほとんどが山中ではなく「人里」「まちなか」で起きています。
・玄関を出てすぐ頭部を引っかかれた
・悲鳴を聞いて家の中から駆けつけた娘さんも襲われた
・新聞配達中や散歩中に襲われた
・駅前で次々と人が襲われた
秋田市、美郷町、鹿角市、五城目町……県内各地で、日常の暮らしが脅かされています。私の故郷である横手市でも、市の公式X(旧Twitter)で「不要不急の外出自粛」が呼びかけられました。コロナ禍以外でこのように常態的に外出自粛の制限がかかるなど、まさに異常事態です。G7の一角をなす先進国で、野生動物により日常生活が脅かされる地域があるー。この重みを国は認識しなければなりません。
■「顔面破壊」という凄惨な現実
今回の質疑で私が最も強く訴えたかったのは、被害の「質」の深刻さです。
報道では「命は助かった」「重症」などと伝えられることがありますが、その言葉の裏には想像を絶する苦しみがあります。
質疑では、秋田大学の大学病院の医師らがまとめた資料を大臣に提示しました。それらによれば、クマによる外傷の90%は、顔面や頭部に集中するとのこと。鋭利な爪や牙、そして強烈な打撃により、顔面の骨格そのものが破壊され、眼球破裂や失明に至るケースも少なくありません。
「命が助かった」としても、見る・食べる・匂いを嗅ぐといった基本的な機能を取り戻すために、何度も再建手術を繰り返さなければならない例もあります。
現在、クマの駆除に対して全国から抗議の声が寄せられ、現場が疲弊しています。しかし、この「顔面が破壊される」という凄惨な被害実態を国が詳細に把握し、国民にありのままを伝えることができれば、駆除という苦渋の決断に対する理解も広がるのではないでしょうか。
石原大臣からは「亡くなった方だけでなく、甚大な被害を受けている実態について、できる限り情報収集したい」との答弁を得ました。環境省には、単なる数字の集計にとどまらず、被害の深刻さを直視した情報発信を強く求めました。
■「ガバメントハンター」の法整備に向けて
また、猟友会の高齢化が進む中、国が主導して捕獲の担い手を確保する「ガバメントハンター」の議論も進めていかなければなりません。現在は定義も曖昧で、銃の所持や保管に関する法的な課題も山積しています。警察や自衛隊のように、公的な管理の下で銃を運用できる仕組みづくり(銃刀法改正含む)が必要です。
秋田で起きていることは、明日の日本の姿です。
住民が安心して暮らせる環境を取り戻すため、引き続き現場の声を国政に届け、具体的な対策を前に進めてまいります。