2022.03.31 14:42
大雪に苦しんだ冬も終わりに近づき、秋田にも春の訪れが感じられる頃となりました。
秋田の真冬の3ヶ月ほどは家がとにかく寒い。国会などで数日間留守をすると、一昼夜暖房をつけっぱなしにしてもなかなか家の中が温まりません。
こうしたことは北国の冬の宿命、そう思っていたのですが、実は、日本の住宅などの建物における省エネ基準は、諸外国と比べて相当立ち遅れている、そんなお話を環境団体の方から教えていただきました。日本が定めている断熱などの基準は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどと比較すると半分から半分以下。建物がいわば燃費の悪い車のような状態で、そこで消費されるエネルギーがだだ漏れのような状態になっている、とのことでした。
住宅・建築物で消費されるエネルギーの割合は高く、日本全体で消費するエネルギーの三分の一を占めています。
温室効果ガスの総排出量の3割強も、住宅・建築物分野から排出されており、温暖化対策をするというのであれば、この分野の対策は待ったなしであると言えます。
こうした環境の観点に加えて、住宅の寒さは、命や健康の問題にも深く関わっています。
ヒートショックという言葉をご存知の方も多いと思います。
特に冬場、暖房の効いた居間から寒い脱衣所などに移動し、熱い風呂に浸かった時などに血圧が乱高下することによって、脳内出血、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈解離などの病気が起こり、この病気そのもので亡くなったり、病気が原因で転倒したことによる頭部外傷や浴槽での溺死などに繋がったりしているー。
私の親友の父も、このヒートショックによると思われるのですが、7年前、浴槽で亡くなった状態で発見されました。健康だった人が突然命を奪われる。住宅の寒さは、快適であるかどうかを超えて、こうした悲劇を招いているのです。
健康リスクが減り快適な生活が手に入ること、環境負荷も低いこと、全てにおいて利点ばかりのため、近年新規着工の住宅等では断熱性の高い建築物が増えてきています。しかし、まだ省エネ基準が義務化されていないことで、基準に満たない建物も多く建築されています。
建築物は、一度作られれば、20年30年と使われます。省エネ基準を義務化し、将来にわたって断熱性の高い住宅・建物を残していかなければ、中古市場に出るそれらが質の悪いまま残り続けます。そして環境負荷が高く、健康にも悪く、快適性も劣るそれらの建物に住む人たちがでてくるのです。
国交省ではすでに対策を検討しており
・省エネ基準を全ての建物に義務付けること
・さらに性能の良い高機能住宅の建築を促していくこと
・中古住宅の省エネ改修支援
・木材利用の促進(木材は成長過程でCO2を吸収している環境負荷の低い資材)
等を内容とする「建築物省エネ法」の改正案を用意しています。
この内容は、環境省、経産省も加わった検討会で合意された内容であり、業界団体にも異論はなく、一刻も早く進めるべきものとされています。しかし、今国会提出を目指すとしながらも、まだ法案が国会に提出されていません。
脱炭素社会の実現には、これからの技術革新に頼らなければならない部分もあるなか、この分野はすでに技術も確立しており、こうした技術的に可能でやれることを全てやることが目標達成のためには不可欠です。
脱炭素社会を実現するためにはそもそも使うエネルギーを減らすことが最も大事であることは明らかで、そのことからも、建築物省エネ法の改正案は一刻も早く進められるべき大変重要なものです。
日本などは小さな島国、経済も落ちてきているのだし、大した影響はないだろう。
そう思われるかもしれませんが、日本は今も世界第5位のエネルギー消費大国。
加えて、このところの国際情勢の変化。エネルギー源の調達がさらに難しくなり、調達コストが今後も大幅に上がる可能性があります。建築物の省エネは経済安全保障の観点からもとても重要です。
山口環境大臣は気候変動対策に関し、「できるかできないかではなく、やらなければ日本が危ないとの覚悟で取り組む」と所信で述べています。先日の委員会で質問したところ、大臣からは「建築物省エネ法における規制措置を強化するということが我々としても大事」と前向きな答弁をいただきました。
一刻の猶予もありません。ぜひ今国会に提出され、成立させることが叶うよう今後とも働きかけていきます。
写真は河北新報より