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いま、これからの問題

2020.05.29 16:32

「アスベスト」と聞いて、昔あった健康被害と思われる方は多いと思います。実は私もそうでした。
でも、それは大きな誤りです。高度成長期に建てられたアスベストを含む建築物が老朽化し、解体工事件数は2028年にピークを迎えると言われています。 アスベスト対策はいま、これからの問題です。

5月28日、環境委員会で大気汚染防止法改正の質疑に立ちました。
大気汚染防止法は大気汚染に関して、国民の健康を保護することを目的としており、建築物の解体工事等におけるアスベストの飛散を防止することも含まれています。今回の改正では、これまでアスベストが飛散する恐れが少ないとして規制の対象となっていなかった建材も規制対象とし、解体工事前調査とその結果の報告を新たに義務付けるのが主な内容です。

今回の質疑にあたり、アスベストを取り巻くこれまでの歴史的経緯について調べました。

アスベストの危険は、古くは1950年代から指摘をされてきましたが、確たる科学的知見がないとして日本では長く放置されてきた様子が資料から伺えました。
海外での裁判や、国内での高濃度での漏洩、アスベスト製造工場の労働者のみならず、工場周辺の住民の罹患や死亡などが明るみとなり、後追いで規制が順次強化されてきたのです。

私自身がアスベストという言葉を初めて耳にしたのは、おそらく小学生の頃、母からではなかったかと思います。資料を読みながらなるほどと思ったのですが、学校施設でのアスベストの使用への不安の高まりがあった頃と一致しています。
母も、自分の子どもの通う学校にアスベストは使用されていないのかということを不安に思っていたのでしょう。
当然、小学生のときに危険性が指摘されていたアスベストは、もう過去のものと私自身は思っていましたが、今回改めて資料を読むと、全面的に製造禁止と法改正がなされたのは2006年、猶予期間も撤廃されて完全禁止となったのはなんと2012年。つい、最近のことです。

これから、アスベストの使用が許されていた時代に建てられた建築物の解体が、ピークを迎えます。
建物に閉じ込められていたアスベストが解体と共に、再び目の前に現れるのです。

その事実を知って「解体工事の際に、アスベストは漏れないの?」と心配になる方は多いと思います。
私もその一人でした。解体現場からアスベストが漏れていないか監視するためには大気濃度の測定が不可欠です。
ですが、今回の法律改正では、解体現場での大気濃度測定の義務付けは見送られました。

その一番の理由は、リアルタイムでの測定ができないという、現在の技術レベルの限界によるもの。
つまり、解体現場でアスベストの大気中濃度を測定をしても、現在の技術ではその解析に一週間以上を要するため、数時間や数日で解体を終えてしまうような現場で測定しても、漏洩がわかった頃には工事は終えているから意味がないとのこと。

私は、リアルタイム測定ができない現時点でも、義務付けをすべきだったと思います。リアルタイム測定ができず、アスベストが飛散、工事区域外にも漏洩しているような解体工事を即時に中止させることができなくとも、もし労働者や周辺住民らに将来健康被害があったときの事後検証ができるようにしておく、また、そのようなことができるとわかれば抑止力も働く、と考えるからです。

残念ながら今回の改正案では盛り込むことは出来ませんでしたが、環境省は現在リアルタイムの測定ができるよう技術開発に取り組んでおり、それが実用化された場合はさらなる法改正を待たずに義務付けるとの答弁を得ることができました。

2018年にアスベストが原因で命を落とされた方はわかっているだけでも4千名以上と言われております。
これは積算の数字ではありません。1年間でアスベストにより亡くなった方の数です。

アスベストは平均の潜伏期間が40年とも言われ、暴露と健康被害の因果関係の立証が非常に困難で、自由にならない体に鞭打ち、今も裁判で争っている原告の方が多数いらっしゃいます。
今回の法改正は、今まで規制対象ではなかったものも調査・報告の対象とするという意味では前進ですが、私の任期のうちに、もうこれからはアスベストの被害は一切起こり得ないと言えるようなしっかりとした規制がなされるように、引き続き気をつけて推移を見ながら指摘をしていきたいと思います。

写真:山下議員が質疑の際に提示された、レベル3建材のレプリカとそこに含まれるアスベストと同量の小麦粉を見せていただきました。
3段階のうち一番配合率が低い、飛散しないと言われているレベル3建材でも、30センチ四方の板にこれだけのアスベストが含まれています。

5月29日
てらたしずか


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