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森のエビフライ

2021.04.28 15:34

皆さんは写真のものが何かお分かりになりますか?
これは、通称「森のエビフライ」。
松ぼっくりの松かさの根本にある実をリスが食べた後に残ったもの。
実は私も、旅行先で森歩きの案内人の方に教えて頂くまで知らずにいました。
教えていただいてからふと秋田市内の公園で子どもを遊ばせていたら、駐車場の周りの木の下にたくさん落ちていることに気づきました。
誰かに教えてもらわなかったら目にも留まらなかったかもしれないもの。
案内人の方が子どもの手のひらにのせてくれたこのエビフライを眺めていると、森に棲む動物たちの息づかいが聞こえてくるようで心が安らぎます。

今国会で、自然公園法改正案が成立しました。
国立公園や国定公園をより地域の方にとっても観光客にとっても魅力的なものになるよう保全と利活用をより進めていこうとするものです。
残念ながら、現在、国立公園等の中には、利用されずに廃墟になっている施設が点在していたり、その景観を削ぐようなものがそのまま残されていたりしている状況があります。今回の改正では、権利関係が複雑で手がつけられなかったそうしたものの撤去も進むような施策が盛り込まれています。

この法案の審議にあたり思い出したのは、パンダの写真に添えられていたWWFのキャッチコピーです。
それは、
「かわいいは、守りたいのはじまり」
というもの。
私は、自然環境の保全はしつつ、きらりと光る観光資源でもある国立公園等を利活用することに賛成です。
豊かな自然を守りたいと思うのは、その豊かさを実感してこそと思うからです。

秋田県立大学の調査研究によると、今の子どもたちの自然に親しむ機会は大きく減っています。
高齢者、保護者、子どもの3世代を対象に行われた調査では、森や川、田んぼなどで遊んだとする経験が世代が下がるに連れて減っています。
そして、自然に親しんだ機会が多い人ほど、自分の子どもを自然に親しませたいと考える人が多いこと、親しむ機会が多かった人ほど自然に対してポジティブなイメージをもっていることなどが明らかになりました。
環境省が把握している研究でも同様の傾向があり、自然に親しむことは、心身の健康にも資する重要なものであると認識しているとのこと。

子育てをしていると、自然に親しませたいと思いつつ、なかなかその機会を作ることは難しいとも感じます。
ありのままの自然は、小さな子どもを連れてはかなりハードルの高いもの。クマや蛇や蜂などの危険な生き物はいないか、かぶれる植物などはないか、自分が身をもってよく知っている環境でなければ、連れていくのは容易なことではありません。
秋田では、豊かな自然がありながらも、公園や住宅地でもクマの出没があったり、秋田市内の住宅地でも痛ましいクマの人身被害が発生したりしています。秋田市の我が家近くでさえ、通りを隔ててすぐ向かいの家の庭にクマの糞らしきものが見つかるなど、散歩したり、庭に長くいることに不安を感じる状況もあり、せっかくそばにある豊かな自然を享受することを躊躇してしまう状況も生まれています。
逆に都会である東京の公園の方がそうした危険を感じずに自然に親しませることができることになんとも言えない複雑な気持ちになることも。

長野県軽井沢町では、自然保護団体の力を活用し、NPO団体ピッキオにクマ対策を任せ、アメリカから連れてきた熊の気配がわかる犬、ベアドッグを連れてのパトロールや、熊にGPSを取り付け、人里に降りてきたクマ捕獲、花火の音を聞かせ「人の近くに来ると怖い思いをする」という経験をさせて山に返すという行為を繰り返すなどの徹底した取り組みにより、年々クマの事故は減る効果をあげていると聞きます。

自然と人間との共生を考えること、環境保全意識を高めるためより多くの人が自然に親しむ機会を作ることを、皆さんとともにこれからも考えていきたいと思います。


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