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ゼロウェイスト宣言のまち、上勝町へ

2022.10.31 15:02

合間を見つけ、以前からお伺いしたいと思っていた徳島県上勝町にお邪魔してきました。

上勝町は、2003年にゼロウェイストを宣言し、今では8割のゴミをリサイクルしており、平均2割という日本のリサイクル率を大きく上回る人口1300人ほどの小さな町です。

ゼロウェイストよりも、上勝は、「葉っぱビジネス」として有名になった町としてご記憶の方が多いかもしれません。

2年前、この町に、町民自らが自分達のゴミを持参して45分別するゴミセンターとそれを学ぶホテル、集会場として使えるホールが併設された「WHY」が誕生し、今、この上勝町の取り組みが多くの雑誌などで取り上げられ、再び注目を集めています。

上勝町は、なんとゴミ収集車が過去一度も走ったことがないとのこと。全て、町民はリサイクルのもの以外は基本的に自分達で野焼きするなどして処理していたそうです。ゴミ焼却場が一旦はできたものの、規定を上回るダイオキシンが検出され、町は焼却施設の改修に膨大な費用をかけるかどうか、選択を迫られます。そして、結論として、ゴミを極限まで分別リサイクルし、ゼロウェイストを目指すことを決めたのでした。

おおよその町民は週に何度か、職場に向かう途中や週末にまとめてゴミを持参し、45分別していきます。どうしても自力で運ぶことができない人たちはボランティアに助けてもらうことができます。生ごみは持ち込むことを禁じられており、各家庭でコンポストなどを利用して処分することと決められています。当たり前ながら家庭に45個もゴミ箱を置くなど現実的ではなくどうやってやっているのかなど、疑問は尽きません。センターの方に話を伺うと、普通に暮らしていて、日常で出るゴミはせいぜい10種類くらい、それを適当にわけて持ってきて、細かい分別はセンターのゴミ箱に分けるときにやる。その前に、まだこのまま使えると思われる洋服や食器などあらゆる雑貨はくるくるセンターというリユース専用置き場に置きます。ここに置かれたものは、簡単なクリーニングののちに、センターに併設されているくるくるショップに陳列され、町民でも町への来訪者でも、好きな人が好きなものをタダで持ち帰ることができます。持ち帰る時のルールはひとつ、持ち帰るものの重さをそこに置かれている秤で測って重さを記録すること。それによって、誰かの不用品として持ち込まれたもののうち、年間どのくらいの量が他の家庭でリユースされることとなったかが可視化されるようになっています。

併設されたホテルの宿泊者は、ゴミの分別を体験することができます。

ホテルにチェックインすると、まずは自分が滞在する間に使用する量の石鹸を目分量で切り分けるところからスタート。それを小さく切られた新聞紙にくるんで部屋に持ち込みます。

また、これまた滞在中に消費するコーヒーとお茶は大体何杯ほどかを聞かれ、これもまた、その分だけの量がアルミ缶などに入れて手渡されます。

部屋に置かれたゴミ箱や生ごみやプラスチック、「どうしても燃やさなければいけないゴミ」などと書かれた小さなプラスチックケース8種類。

ルームサービスやショップなどはない簡易ホテルのため、おやつなどを多めに持ち込んだのですが、一つ一つ、そのゴミをどこに分別すべきか考えなければいけません。お気に入りのティーバッグも持ち込んでいましたが、お湯を沸かしていたときに、ふと、捨てるときは茶葉とフィルターをバラバラに分別しなければならないと気づき、飲むのをやめました。普段自分がいかにそういうことに無自覚に物を選んで消費しているか、特に、今住まいがある秋田市は多くのものを燃えるゴミとして捨てられるため、意識が行き届いていないかを自覚される時間となりました。子どもが選んだチョコレートの包装も、紙とアルミ、プラスチック、3種に分ける必要があります。粉やあんこがこびりついた大福のプラスチックの袋も洗って乾かして分別に。たった1泊の滞在でこれだけの種類、これだけの量のゴミがでるのかと気づかされます。鼻をかんだティッシュは衛生上の観点から、「どうしても燃やさなければならないゴミ」。鼻をかむのもなんだか躊躇してしまいます。

翌日チェックアウトの際に、それらをセンターの分別収集センターに持って行き、センターの方に教えていただきながら分別していきます。

紙類だけでも10分別ほどあります。町の特産物で作られたアイスクリームのカップは紙。リサイクルしやすいよう、カップをハサミで解体して「紙カップ(内側が白色)」のところに分けます。洗ったけれど乾いていないプラスチックのお菓子の袋は靴下を干すような物干しに洗濯バサミで挟んで干す。45分別のゴミの名札には、そのゴミを出すと資源物としてのいくらの収入が町に入るのか、もしくは処理運搬費用として町が支出するのかが明記されています。意外だったのは、プラスチックボトルにはそれなりの売却収入があり、より環境にやさしいと思っていた瓶は、処理施設が町の近隣にはないことから、運搬費用が嵩むために町としての収支はマイナスとなっていたこと。純粋に環境配慮だけとはいえない地理的な事情などもここからは見えてきます。そして、町の人たちはそうした町の収支を気にしてか、プラスチックボトルの飲料は割と多く消費しているようだともセンターの方に聞かされました。

環境先進地として訪ねた上勝町は、実は自治の先進地。

「町のお金を何に使うかは自分達が選択して決める」

その当たり前を突き詰めた結果の「ゼロウェイスト宣言」であったということが、ゴミの分別体験をしながらお話を伺ってよく理解できました。

上勝の暮らしは、自分の出すゴミが環境を、そして子どもたちの未来に負荷をかけることを可能な限り少なくすることができる。町の未来をどうするかみんなで決める。分別は少し面倒でも、ここでの暮らしは環境と未来に優しい。そのことがもたらす静かな心地よさ、そして自治の選択の結果を一人でも多くの方に感じてほしい、そんなことを思いながら帰路につきました。

写真、左上から時計回りに:
1、センターの外観。窓も全て、不要になった建物のサッシや窓が再利用されています。
2、町の取り組みが取り上げられた新聞・雑誌や、環境問題の本や絵本が置かれたライブラリ。集会所としても利用されています。置かれている椅子なども再利用の品。
3、分別体験中。紙だけでも10種類以上に分類が必要です。
4、5、リユースショップ。持ち込み、持ち帰り共に無料。持ち込みは町民のみですが、持ち帰りは外来者でも可能なため、私も記念にお皿を一枚いただいてきました。
6、分別センターの一角。瓶も色ごとに分別リサイクル、種別ごとの町の収支が記されています。

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