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Because I am a girl〜アジア女性議員会議inシンガポール報告②

2022.12.27 14:32

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父が亡くなり、家族から結婚するように言われた。結婚なんてしたくなかった。
でも、生活のために結婚以外の選択肢はなかった。
幸い夫には理解があり学生生活を続けられている。子どもを産めば勉強は続けられなくなるからずっと誤魔化してきた。でもそろそろ子どもを産まなければ第二夫人がやってくることになるだろう。そうなれば家での自分の立場が危うくなる。いずれにしても勉強を続けることは難しいかもしれないー。
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彼女の安全のために国は記しませんが、こちらもシンガポールの会議が終わった後、とある学生から聞かされた話。幸い、女性が主体的に利用できる避妊手段へのアクセスは日本よりもいいようで、今の所はなんとかなってきたのだそうです。シンガポールにいるうちに避妊インプラント(腕に入れるマッチ棒ほどのサイズのもので数年間避妊効果がある)を入れられないのかなど話しましたが、いずれにせよ子どもを授からなければこの先の生活が危うくなるから選択肢はないのだと。まだあどけなさの残る彼女のこちらを見ているようで遠くを見ているような眼差しを忘れることができません。

シンガポール出張の2週間ほど前、駐日EU代表部主催の男女平等に関するワークショップにも登壇させていただきました。
ジェンダー平等がアジアよりも進んでいるヨーロッパ諸国。特に北欧の国々から聞かれるのは、「まだ平等ではない」という言葉。女性議員の割合が45%を達成していても、まだ50%じゃない、フェアではない、という認識で努力を続けています。その他のヨーロッパの国からも「私たちは最後の一キロを走っています」というような言い方をされます。
かたや日本はどうかというと、「昔よりは良くなった」「昔は良かった。今はめんどくさくなった」「不平等がどこにあるかわからない」という言葉が多く聞かれるように思います。
バングラデシュの調査を行った研究者が、議員にインタビューした際に投げかけられたのは「ジェンダーって何?ジェンダーは理解できない。あなたたちが騒いで問題を作り出そうとしている」という言葉だったそうです。

ジェンダー研究者の彼女にとっては衝撃的な言葉であったと思いますが、そうした政治家が特にアジアの国々に少なからず存在していることは事実であると感じます。

日本においてもしばしば政治家から同様の主旨の発言があったり、ジェンダー問題を理解しない言動が炎上して話題になることもありました。複数の医学部において、女子受験生の点数を減らし、入学者に占める男子の割合が多くなるような女性差別を行っていたことが発覚したのも、ほんの4年前です。日本にはまだこうした有形無形の差別が存在しています。

最近は日本のテレビ番組を見ていると、ジェンダーやLGBTQ+の観点から違和感をもったり、特に女性の容姿や年齢などについて揶揄するような言動にモヤモヤして楽しめないので、ニュースやドキュメンタリーを除いてはほとんどテレビを見ることがなくなった、という話も友人としたばかり。
こうした日本の現状を考えると暗澹たる気持ちになることもありますが、日本は、少なくとも冒頭の彼女のような状況はなくなっているということを考えれば、先を歩いた女性たちが作ってくれた道をさらに切り拓く役割を自分が放棄するわけにはいかないのだと、その責務を負っているということを改めて重く実感します。

台湾のサンディー議員からはこんな言葉も。
「日本の影響を受けてきて今の台湾(女性議員比率40%)がある。それなのに日本(同15%)はどうして?でも、落ち込むな。転機は突然訪れたりするもの。私は生きているうちに日本が変わるところを見たい」
台湾の研究者からは、「女性の割り当てを決めるクオータ制が理解を得られないのなら、ジェンダーニュートラルなクオータ制を導入するという方法もある。例えば男女とも最低3割と定めること。そうすることで、いずれは男性候補者がその制度に救われることになるかも知れない」との発言があり、議場からは笑いが漏れました。

北欧の国などでは主要政党の党首全てが女性ということも。そんな国では、子どもが「男性は党首になれないの?」と聞いてきたというエピソードもあります。見える景色によって次世代に刷り込まれるものの大きさを感じます。

日本では、ほぼ全ての党首が男性。
いつ女性の総理が生まれるのか、この景色からは全く見えてきません。
日本にもそうした強制力を持ったクオータ制を導入すべきであると考えていますが、多くの男性現職を抱える与党が、現職の男性を新人の女性候補に差し替えることが現実的に困難であるという事情で、導入の道筋は見えてきません。選挙制度を変えるのはもっぱら議員発議であるので、現職の男性議員が多い政党がそうした制度を自ら導入したがらないのは自明です。

会議にはジャーナリストや研究者の方々も参加されていて、研究をしたり取材をしたりして物事を明らかにしていく、そうした職業が羨ましいと思うことも正直ありました。政治の世界はそうした前向きなエネルギーでものが進むことが少なく、その他の要素が介在することがあまりにも大きいと感じられるからかもしれません。それでも、今回、この会議に参加してはっきりと思い知らされたのは、訳のわからない得体の知れない政治の世界に一歩踏み出してみよう、政治家になってみようと思ってくれて、さらに、当選ができる人などほんのわずかなのだから、私は私で、その恵まれた状況を活かしてここで仕事をしていかなければならない、ということでした。

Because I am a girl.
「だって私は女の子だから」
そんなふうに女の子たちが思ってしまう状況を少しでも減らし、1日でも早くそれをなくすことを実現するために、男女平等実現のための長い列に連なり、これからも懸命に働いていきたいと思います。

写真は励ましの言葉を下さった台湾のサンディー議員()、同じく台湾の研究者であるチャンリー氏()と。

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今回が年末最後の更新になります。
本年も長々としたブログにお付き合いいただき有難うございました。
来る年が明るい一年となるよう、また新しい年の皆様のご健康とご多幸を心からお祈りしております。
どうか良いお年を!


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