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空を大地を

2023.07.11 16:04

男鹿市五里合琴川で行われた「ホタルの里音楽祭」に行ってきました。

森と田んぼに囲まれ、文字通り多数のホタルが舞う美しい場所。日暮れとともに変わりゆく景色の中で、この景色に価値を見出している幅広い世代の皆さんと音楽を聴きながら、かけがえのない幸福感に包まれた素晴らしい体験でした。

この音楽祭が催されたのには理由があります。それは、この場所に風力発電所の計画が持ち上がっていること。この土地の豊さを愛し、カフェ「珈音」を営まれている佐藤さんが、発電所ができればホタルが舞う自然環境は失われてしまうと訴えています。

昨年6月に新聞報道があったこともあり、ご存知の方もあるかもしれませんが、保護区となっている場所のすき間を縫うように計画されたこの発電所については、複数の大学教授らからも異論の声が上がっています。

もちろん、地球温暖化は深刻な問題であり、再生可能エネルギーの活用など今すぐにできることはなんでもしなければという喫緊の課題です。将来世代のことはもちろん、今も続く報道の通り、水害の激甚化などにより気候変動の影響は既に大きく私たちの生活をも脅かしています。そのことを考えれば、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーへ最大限シフトさせていくことは必要なことです。

一方で、再生可能エネルギーの適地というのは、自然が豊かな場所であることもまた事実。7日に秋田市で行われた東北弁護士会連合会の定期大会では、再生可能エネルギー導入に住民の意見を反映させる制度の拡充を求める決議案が採択されました。どこを開発し、どこを守るのかは、それぞれそこに住む人たちと自治体が何を大切にして選択をするのかに委ねられています。国や行政が出来ることは、そこに住む人たちの的確な判断を可能とするために、丁寧なアセスメントを行い、情報を提供すること。そして、全体を俯瞰し、住民の意見を尊重した上でゾーニング行って、開発を進めるところと守るところを明確に区別することです。

そんなことを思いながらも、美しい景色の中、心地よい音楽に耳を傾け、胸が苦しくなる思いで心に浮かんできたのは、ある詩の言葉です。

「どうしたら 空が買えるというのだろう?
 そして 大地を

 大地は わたしたちに属しているのではない
 わたしたちが 大地に属しているのだ

 それなのに 白い人は(*原文のまま)
 母なる大地を 父なる空を
 まるで 羊か 光るビーズ玉のように
 売り買いしようとする

 わたしたちが この命の織物を織ったのではない
 わたしたちは そのなかの 一本の糸にすぎないのだ

 夜の池のほとりの
 カエルのおしゃべりを 聞くことができなかったら
 人生にはいったい どんな意味があるというのだろう」

(『父は空 母は大地 インディアンからの伝言』〜寮美千子訳から一部抜粋)

犬の散歩をしながら見られるホタル。
田んぼのそばの水たまりにいたゲンゴロウ。
ヒグラシの鳴く夏の夕暮れ。
かえるの合唱、ドバトの鳴き声。

私が子どもの頃は当たり前だったこうしたもののいくつかは、実家のそばでも既に失われてしまいました。どこにでもいたゲンゴロウは、調べてみたら既に絶滅危惧種に。一度開発がなされれば、恐らくどれだけ手をかけてもほぼ戻ってくることがない動植物たちがあります。

何を、どこを守るのか。究極的には地元の方々に委ねられていることではありますが、市全体、あるいは県全体を考えた時に、どこを開発し、どこを守るのか、そのことを県民である私たち一人ひとりが考えていくことが大切です。

県内でも人口流出が危機的であると指摘される男鹿において、この自然を守りたい、この美しい場所でカフェやワインバーを営み地域を持続可能なものとしたいという若い世代の想いを大切にしながら、私自身も動向を見守っていきたいと思っています。

追伸:20代の頃に買ってから幾度となく読み返しているこの「父は空 母は大地」。
全文がインターネット上で公開されていますので、下記にリンクを貼っておきます。
素晴らしいのでぜひご一読ください。

https://ryomichico.net/seattle.html?fbclid=IwAR2UcGTxYHVTgV2bAoOfUL8aOKuJ1MlzuXl5jS9lVeV4AFwFVOdq4XfVigA


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