2024.12.23 14:52
国連人口基金(UNFPA)人道支援局長の新垣尚子さんと、同日本事務所長の成田詠子さんとお話する機会を頂きました。
UNFPAは、全ての妊娠が望まれ、全ての出産が安全で、全ての若者の可能性が実現される世界の実現を目的として設立された機関です。
途上国においては、今も少女や女性たちが「性と生殖に関する健康と権利」に関する課題に多く直面しています。UNFPAをはじめとする多くの支援団体の活動で、年を追うごとに改善をしていた様々な課題がコロナ禍で逆戻りしている事例もあります。アフガニスタンでは助産師を養成する機関が女性が就労することに繋がるとして活動停止を余儀なくされたり、イランでは9歳からの子どもの結婚を可能とするような法改正が行われるなど、国内の指導体制の変化などによって、再び児童婚や安全な出産が脅かされるような状況もうまれています。
支援局長の新垣さんは、ウクライナやガザなどの報道が続く中で、アフガニスタンのことも忘れないよう年に一度は訪ねることにしている、とおっしゃっていました。私自身も、国際会議で出会ったアフガニスタンの女子学生のその後や、以前お話をお伺いしたことがある秋田市出身のジャーナリストの小松由佳さんが現在取材に入られているシリアのことなど、日本ではあまり報道にのぼることのない国々のことも忘れずにいたいと思っています。
最も大きな懸念は、次期アメリカ大統領にトランプ氏が選出されたことにより、UNFPAが課題としているような分野へのアメリカの拠出金が停止されることです。これに対応するため、日本やヨーロッパなどその他の国々がより大きな支援をすることが国際的に求められることとなります。
「全ての妊娠が望まれ、全ての出産が安全で、全ての若者の可能性が実現される世界」
日本の現状も、これらの課題と決して無縁ではありません。
日本でも望まない、予期せぬ妊娠が主な原因であると思われる新生児遺棄の事件は度々報じられます。ここには、全ての女性が主体的に利用できる確実な避妊方法が安価に提供されていないという課題が隠されています。妊婦健診を受けずに出産に至る過程で支援につながらなかった多くのケースの背景には、困難を抱える女性たちの姿があります。
また、秋田も例外ではありませんが、出産をできる病院が減ってきている現状もあります。病院の経営の効率化のために、一定の集約化は避けられないものと考えますが、今朝も報じられている通り、妊娠後期の妊婦検診に交通費の補助をするなど、安全な出産を確保するためにどのような支援が必要かを、市民県民を巻き込みしっかりと考えていく必要があります。
そして、一人ひとりの子どもたちが自分の可能性を実現する社会のためには、増加の一途を辿る不登校の子どもたちにどう学びを保障して行くのかという視点が欠かせませんし、障がいのある子ども、医療的ケアの必要な子ども、ヤングケアラーの子どもや若者たちの支援状況も改善する必要があります。また、人生の初めに大きな苦労を抱えている実親のもとで生活できない社会的養護の子どもたちの課題は、真っ先に解決されなければなりません。こうした支援にすら繋がらずに、家の中で危機的な状況にある子どもたちはいないか、子どもたちと日常的に接する全ての大人たちが目を配っておくことが必要ですし、発見時に確実に支援に繋げるための社会的な資源が用意されていなくてはいけません。
こうして考えていくと、女性と子どもの課題はいつも地続きであり、そこには、まだ子育てへの参加が乏しい男性の姿や、それを可能とするための働き方の改革、社会を構成する一人ひとりの意識改革が必要であることも垣間見えてきます。
クリスマスのひととき、どうか厳しい環境にある少女や女性、子どもたちに想いを馳せていただければ幸いです。
コメント欄に、UNFPAのサイト、現在シリアにて取材をされている小松由佳さんのページを貼り付けておきますのでご覧いただけたら幸いです。
https://www.facebook.com/yuka.komatsu.0922