2020.01.15 17:27
本日、小泉進次郎環境大臣が育休を取得することを発表しました。
様々な意見がある中、よくご決断下さったと思いますし、心から賛意を示したいと思います。
男性の育児休暇は非常に有意義であり、様々な社会変革に寄与するものです。
今回の小泉大臣の判断は、一般的な男性の育休取得に対して、風土や制度の改善を促す大きなきっかけになると思います。
昨年末、大臣に手紙を書きました。所属する委員会で育休についての議論をさせて頂いたり、雑談等をすることはあっても、私自身が考える男性の育休の必要性を充分に伝え切れていないと感じていたためです。
どのような形で育児をするか、究極的には夫婦で決めることですが、父親が育休を取りたいのに取れない今の日本社会で(育休を希望する男性は調査により6〜8割、実際の取得率は6.16%)、大臣が育休を取るか取らないかは、もはや大臣ご夫婦だけの問題ではなく、社会問題になっていると感じてきました。
世の中には様々な立場の方があれども、社会の雰囲気を変えられるチャンスに恵まれた人は限られます。小泉大臣にはご自身の育休を通じて、そのチャンスを生かして頂きたいと思っていました。
現在の日本は、父親が育児をするための時間・環境・社会認識が整っていません。
以前参加した男性育休に関する勉強会では、人的余裕があるはずの大企業ですら、育休を取ろうとしたら「前例がない」と却下されたとか、「奥さんがいるのに取る必要があるのか」と説教されたとか、「育休取得の目的を明確にしろ」と趣意書のような文書の作成を命令されたとか、にわかに信じがたい話を聞きました。
また職場で初めて育休を取得した男性が不合理な異動を命じられたり、事実上のクビになったり、といったことが現実に起きています。当然、そうした不当な仕打ちを見ていた周囲の男性も萎縮します。
育休を取りたいが躊躇している男性たち、取りたいけれども取らなかった男性たちの話を聞けば、みな「制度はあるけど取れる空気がなかった」と言っています。加えて、育休を取ることが所得の減少に実質的に直結する環境も無くなっているわけでもありません。
そんな中で、小泉大臣がどのような形であれ育休を取得することの影響力は大変大きいものと思います。
小泉大臣が大臣に就任した時に、「もう内閣の一員になったんだから育休なんて言っている場合じゃない」との発言が、とある政治家からありました。
また今回の発表を受けて「育休を取るんだったら、そもそも大臣なんて受けたらダメでしょう」という批判的な声も少なからず聞かれました。
これらの意見は、大臣という重要な責任がある人に育休は認められないというもの。それはつまり、子育てを家族に任せ仕事に専念できる人しか大臣になれない、あるいは、子育て中の人は、大きな仕事を引き受けてはいけないと言っているのと同じです。
これは子育てに限ったことではありません。この理屈に従えば、妊活中・不妊治療中の女性、介護を担っていたり、病気を抱えていたり、障がいがあったりする人は大きな仕事をしてはいけない、責任ある役割を引き受けてはいけないということになります。
過去の投稿の繰り返しになりますが、私は、今の日本社会を覆うの息苦しさというのは、「家庭を顧みずに働ける健康な男性」を中心に社会を回していることからくるものだと感じています。
そこから排除されてきた女性であったり、障がい者であったり、そのような人たちの視点は社会に還元されずにきました。その人たちが活躍するための仕組みや制度は整えられず、その人たちの視点が生かされいれば産まれていた商品やサービスは誕生することなく、結果として、経済を含め、今の日本の停滞を生んだのではないかと。社会の様々な場面で、多様性は失われて様々な軋みを生んでいます。
この固定化したモデルを壊して行かなければ、日本の未来に光はない、持続可能な社会にはなり得ないと私は考えています。
一例ですが、ベビーカーやチャイルドシートなど、育児関係のグッズにスウェーデンなどの北欧諸国のものに優れた商品が多いのは、男女共に育休を取り職場に復帰することができ、自らの消費者としての視点を商品作りに活かしているからだと感じています。
自分が必要とするものを作っているからこそ、機能、安全性、デザインなど、国を超えて多くの子育て世帯に好まれる商品が産まれている。北欧諸国に共通するのは、男性育休の取得率の高さ。これは、決して偶然ではないと私は思います。
小泉大臣の育休取得と契機に、当たり前に夫婦が協力して育児ができる、育児や介護、障がいなど、さまざまな事情を抱える人も重要な責任ある仕事ができる社会にしなければと責任を感じると共に、これこそが、日本の閉塞感を打破し、経済を押し上げる力になるものと確信しています。
それでも、「国会議員が、大臣が育休なんておかしい」との批判はあると思います。
ですが、育児も家事も全部誰かにやってもらって仕事に専念した人達が政治をしてきた結果が、今のこの日本の姿です。
恐らくこれまで、日本の男性の政治家は、与野党を問わず、子育てをしてこなかったという人が大多数だと思います。その人たちが政治の中心にいたからこそ、少子化対策はどれも的外れに終わり、今日の状況がもたらされてきました。
子育てのままならなさ、子供を抱え思い切り仕事のできないもどかしさ、そして、日々の子供の成長の喜びを知る尊さを感じた大臣が、これからの日本の社会を、政治を、確かに変えてくれるものと私は期待しています。
日本に大きな社会変革をもたらす第一歩を踏み出して下さったことに心から感謝しつつ。
1月15日
てらたしずか
写真: 育休中、ではなく、落選中に育児に専念していた夫と我が子。一時期は私が働き、夫が主夫でした。