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アフガニスタンの寒い冬

2021.12.15 13:33

本日の魁新報にも取り上げられていますが、アフガニスタンで、100万人の子どもたちが飢餓により死に瀕しています。

先週、国際人口問題議員懇談会(会長:上川陽子前法務大臣)にて、アフガニスタンの人道危機と日本の役割に関して識者からお話を聞く機会がありました。

冬を前に多くの人が飢餓に直面している彼の国に対して、タリバンが本当に人道的な政権運営を行うのかといった懸念から、支援をどうするべきか多くの国が対応に苦慮しています。

自分の覚書も兼ねて、伺ったお話をまとめておきたいと思います。

8月にアメリカ軍が撤退し、タリバンが政権についたアフガニスタン。

アメリカ国内で保管されていた1兆円のアフガン中央銀行の資産が凍結され、海外送金も原則禁止となったことで、アフガニスタンの一般市民が給与をもらえない、経済活動ができない、現地で支援をするNGOも対応に苦慮するといった事態にさらされています。

多くの人が家財や衣類などを売ってなんとか凌いできましたが、マイナス25〜40度にもなるという冬が到来し、このままでは実に2300万人が飢餓に苦しみ、数百万人が命を落とすと指摘されています。

タリバンにアフガニスタンの人たちの人権を守らせるためとして科してきた制裁が、数百万人の一般の人たち、しかも多くは子どもや女性といった脆弱な人たちを死に追いやっているとして、アメリカ国内でも批判があがるようになってきていることー。

経済制裁でタリバンを追い詰めたとして、それがよい政権運営に繋がるのであればまだ理解できるが、実際には過激な勢力であるISIS-K(イスラム国ホラサン州)といった勢力が領土の1/3〜1/2を支配するさらに厳しい結果に繋がるとの見通しがあることー。

来年3月までに、もし本当に数百万人が命を落とす結果となったら、中国やロシアは「アメリカやG7が何の罪もない多くの一般人を死に追いやった」と弾劾するであろうこと。これは日本も含めた民主主義体制の国々全体の信頼に関わることー。

十分な食料が得られない家庭が95%。

年末までに栄養不良になる子ども320万人。

こうした状況の下、日本のNGOも活動を再開しています。

ただ、そうした団体も、海外送金の停止などによって、活動に支障がでています。

保健・衛生分野で援助を続けているNPOカレーズの会理事長は、「現地のコロナ感染者の報告者数は減っているが、それは単にPCR検査キットがないだけ」と話します。

そもそも乳幼児死亡率が日本の25倍、妊産婦死亡率に至っては100倍以上(ユニセフ、2019)であるアフガニスタン。お産の支援なども行うこの団体は、タリバンと協議し、今も女性スタッフが仕事を続けることができており、また、女子生徒の教育支援も継続できているとのこと。

長くアフガニスタンで支援を続けてこられた故・中村哲医師は現地の石を用いた用水路と灌漑設備などを作り、実に65万人のアフガンの人たちが農業で生活していくための基盤を築きました。

今も中村氏の意志を継ぐペシャワール会の方達が現地で活動していますが、こうした設備を全国に広げるプロジェクトはなかなか再開できずにいます。

こうした農業や教育分野での支援は珍しく、単なる食糧支援ではない、長期にわたってそこで暮らす人たちの営みを支える活動は国際的にも稀であり、日本にしかできない支援と言われています。

栄養失調で子どもが運ばれてきても物資がなく、なすすべがない医療施設、誰を助けるのかの選別を迫られる現地医療関係者。その医療機関で働く人たちも、9月以降、給与が支給されていません。こうした飢餓の中、500ドルで赤ちゃんを手放す家族もー。

国際社会は、タリバンに、女性や少数者を含むすべてのアフガン人の人権の擁護や再びテロの温床としないことを求めています。

しかし、実際には、資金の凍結や海外送金の凍結によって、最も脆弱な子どもや女性が苦しんでいる大きく矛盾した現状があります。農業においても、種まきができなかったことから、来年の収穫も見込めず、来年への希望をもつこともできないとのこと。こうして罪もない人々を絶望や失望、破滅的思考に至らせるのであれば、今国際社会がとっている対策は逆効果であるー。

前述のNPO団体の方や識者は続けます。

「人権は大事だが、飢えで亡くなる子どもたちや、食がなく暮らしが成り立たない人たちが今この時に助けを求めている現状を世界に知ってほしい。」

「命が失われてしまえば、守るべきその人の人権も永遠に失われてしまう。命あっての物種だ。」

WFPやUNHCRといった国際機関に資金援助をすることはもちろんながら、長くアフガニスタンと良好な関係を築いてきた日本が、現地で活動をする日本のNGOやNPOなどに直接の支援を行うことによって、日本の顔が見える支援が今求められているといいます。

もちろん、国内のことは国内で解決したらどうか、これからどうするのかアフガン政権が道を示せとの声があるのは理解できますが、そうして切り捨てることなど到底できないほど、アフガニスタンは長く他の国のさまざまな思惑や侵攻に翻弄され続けてきた現実があります。

日に日に寒さが増すなか、一人でも多くの方の胸の中にとめていただけたらと思います。

議連としても政府に働きかけを行っています。一刻も早く支援が届くよう強く政府に求めます。

追伸:下記に、ご支援いただける場合の団体の窓口のリンクを記載しております。

様々な団体で寄付を募っていますが、ここでは私も支援しているUNHCR、国連難民高等弁務官事務所の窓口をご紹介申し上げます。

UNHCRアフガニスタン緊急支援

https://www.japanforunhcr.org/appeal/afghanistan


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