2022.01.17 17:10
なぜ、秋田から若者と女性は去っていくのか。
多くの県民が課題と捉えながらも、本格的に議論されてこなかったこの疑問に関し、秋田魁新報が元旦からの特集「若者のミカタ」で正面から向き合いました。
この特集から、秋田は、古い昭和の価値観と訣別できておらず、若者や女性や少数者に寛容でなく、変化を嫌い、家族のあり方に対する考え方も固定化している、こうした価値観からくる言動にさらされることによって、秋田では自分の思い描く人生が歩めないと感じた若者や女性がより秋田を去っているということが複数回にわたって分析されていました。
秋田の人口減は、高齢者がすでに減り始める局面に入っているため、死亡による減少も大きいのですが、若者が秋田を去っていく社会減によるところも当然ながらあります。
このお正月、2年ぶりにいくつかの新年会にお邪魔しました。会場は、見渡す限り多くが男性です。もちろん女性がいないわけでもありませんが、壇上に上がり挨拶や鏡開きなどをさせていただいた女性は私だけでした。
うちの会社や団体では女性もたくさん活躍している、だけれども結婚や子育てやらで管理職となる女性の候補者が見つからないだけだ、、そうおっしゃる方もいらっしゃいます。でも、その前提となる管理職になるための研修や、出張などを伴う大きな仕事の機会を平等に女性にも与えているかどうか、別の会社で働く妻が家庭と仕事を両立できるようにするために自社の男性社員が育休を取ることに寛容になっているかどうか、改めてそうした組織のあり方を一緒に見つめ直していただきたいのです。
「そんなのは都会の大きな会社だけの話で、秋田の中小企業に持ち込まれても困る」
数年前、実際に私が言われた言葉です。確かにそうした思いが胸の内にあるかもしれません。ただ、私は、そうした考え方そのものが、若者や女性を結果として秋田から追い出してきたのだ考えます。
魁の記事では、進学よりも就職のタイミングで地元を離れる人が多いこと、男性よりも女性がより秋田を出て行っていること(男性の2倍)、一度地元での就職を選んだりUターンした女性や若者も、お茶汲みや掃除は女性が当たり前といった社内文化や、女性であるというだけで男性の補佐的な役割を期待される空気に嫌気がさして再び都会に出て行くという事例にも触れられています。
男性、女性の固定的な役割をよしとする考え方の犠牲となっているのは女性だけではありません。
「女は家で子供を育てる」が成立するための前提は、「男は働いて妻子を養う」ことです。
男女の賃金格差があるなかで、ある意味合理的とされてきたあり方ではありますが、こうして「男である限り弱音を吐けず一生働くことが当たり前」とされていることは、男性を長らく苦しめてきました。
まして、昔のように、良い会社に就職さえしたら一生安泰という時代は終わり、新型コロナウイルスによって、今まで確かだと思われていたものの前提が根底から崩れる中、今、一家の大黒柱を任される男性のプレッシャーは相当なものがあります。一度仕事のレールを降りれば「人生の落伍者」とみなされるような社会で追い詰められて、心を病む男性も少なくありません。
男なら泣くな、弱音を吐くな、前を見て進め。こうしたいわば有害な男らしさをうちに抱えて、自分の間違いや弱さを認められず、だからこそ助けを求めることができない。
こうした社会のあり方のもとでは男女ともに苦しく幸せにはなれません。
今の若い世代はそのことに気づき始めています。そして、自分を苦しめる「らしさ」から少しでも自由でありたいと、生まれ育った場所に未練を感じつつも都会へと出ていくのです。
「昔はみんなその中で頑張ったのだ」という昭和の価値観が、時代が変わってもなお横たわる地域から、逃れるように若者らが出ていくのです。
こうした流れを変えるためには、女子供は黙っていろと言わずに、若い人たちの声に、女性たちの声に素直に耳を傾けて、それに沿ってこれまでの在り方を見直していく必要があります。
男性だけが大黒柱の重圧を担わなくていいよう、女性もパートで最低賃金でしか働けないのではなくて、男性と同じように稼げる仕事に就くことができることが何より大切です。そうでなければ、将来のお母さん候補である若い女性は引き続き秋田を去っていきます。女性のみならず、家庭科も男女共に必修といった新しい価値観のもとで教育を受けてきて、古い社会のあり方を女性に押し付けることを嫌う若い男性たちも去っていきます。
そうして子育て環境が厳しい都会に旅立っていった男女が持つ子どもの数は、非常に低い数字に止まっていて、勢いをまして秋田と日本の人口は減り続けていく。新年から暗い話をと思われるかもしれませんが、こうした秋田と日本の現状を少しでも食い止めたい、そのために、男女ともに、働くことと子育てや介護が今のように苦しくない社会をなんとしても作っていく必要があります。
今は令和4年であって昭和97年ではありません。
半年間の通常国会も今日から始まりました。
古き良き昭和は愛しみながら、若い世代を苦しめる昭和は終わらせるために、また、私自身も若い世代を追い詰めるような価値観による言動に気をつけながら、今年も頑張っていきたいと思います。
写真は地元横手商工会議所の新年会員交流会