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当たり前を実現するために

2022.02.02 15:48

夫(衆議院議員)の執念深さによって、医学部の女子受験生差別解消のための大きな進展がありました。名前は書かれていないものの、日経朝刊2面に取り上げられたことを嬉しく思います。

私が2019年の選挙に出るか悩んでいる時、地元案件の他に真っ先に頭をよぎったのはこのこと。女性だという理由で減点されて、医学部に入れなかった人たちが大勢いた問題。

本当なら医学部に入って、医師として人生を歩んでいたかもしれない人が、実は陰で不正に点数を操作されていて、医師にはなれなくて、全く別の人生を歩んでいたという重い事実。

我が子や自分の身に起こったことだとしたら、一生許すことなんてできない。こういうことも、議員になったら取り組めるかもしれないーそう思ったことも、私の背中を押しました。

文科委員会には所属できなかったものの、夫の個別のヒアリングに同席し(役所の皆さんに向き合うのは経験のある夫の方が適任であるため)、この2年ほどやり取りをつぶさに見てきました。

不正が明るみに出た年こそ、文科省は大学別、男女別の合格率の公表に前向きだったものの、その後は数値が出て来ず。個別の面談を繰り返し調査するよう何度伝えても、文科省は、「大学の自主性を損なう」「全国医学部長病院長会議が自主的に公開の可否を決める」「公開せよと言う法的根拠がない」「権限がない」「あくまでも文科省はお願いする立場」「コロナで今大学病院も色々大変であまり急かすことができない」などと言い訳にしか聞こえない言葉を山ほど並べて、自ら調査をするのを頑なに拒絶しました。

私ははらわたが煮えくりかえるだけで全く役に立たない自分を自覚し、忸怩たる思いでした。

性別による差別はだめ、という当然の価値を共有できないのはなぜ?

どうして改善しようという思考回路にならないの?

どうしたら一緒にやれる方法を考えてくれるの?

どうして言葉が通じないの?

と、口に出しても仕方がないことしか頭に浮かんでこず。

夫は冷静に、そもそも問題の発覚は文科省職員の子供の裏口入学が明るみになったことがきっかけであったこと。そうしたことを考えれば、文科省がとりわけ努めて自浄作用を発揮すべき案件であること。そうでなければ役所としての信頼回復はあり得ないこと。今まで不正をしていた大学の自主性に委ねたら結果はどうなるか、また不正をする懸念が高いこと。せめて事後検証が可能なように、毎年大学別の男女別合格率を文科省として把握しておく必要があること。公開は大学が不正をしようとするときの歯止めとして機能する可能性が高いこと。法的根拠がないというが、大学の監督権限官庁は文科省以外にはあり得ないのだから、文科省にこれらをやる責任があること等、何度も繰り返し伝え、時にはトーンを変えて「お子さんいます?自分の娘がこういうことになったらどう感じます?」「友人一家が、このことを合理的に10歳になった娘に説明できないって。こんな国で子育てしたくないって海外に移住しちゃいましたよ。こういう人たちが出ていっちゃうの、日本にとってよくないことだってわかるでしょう」「なんとか変えましょうよ」などと情に訴えたり、「もうすぐ衆院選だと思ってるでしょ?僕が選挙で落ちたとしても、この人(私のこと)は参議院にいますから。彼女はあと丸4年国会にいますよ。今やり過ごしても、妻の方からしつこくやります。我々はこの件、諦めるつもりは全くないですから」と、私をダシに使って、穏やかながらも「これにずっと付き合うのはいかにも面倒になりそうだ」と思わせる雰囲気の醸成を試みる。

文科省:「どうしても出てこなければ最後はやるつもりはあるものの、今はまだ自主性に委ねている段階で」夫:「そうしているうちにまた次の入試がきて被害者がでる」、、などと、ほぼ平行線のやりとりを繰り返し膠着していた時、夫の事務所スタッフが、文科省の不正入試調査の担当とは別の課で、男女別ではないものの大学別の合格率を毎年調査、集計していた表を見つけました。こんなものがあったのか、これを単に男女別に集計したら済む話じゃないかー。

個別の面談の場で、煮え切らない役所の皆さんにその調査を示し、さらに、目の前にいる担当者がその調査・集計をしていた課から異動してきたばかりであったことを突き止め、「この調査の存在を知らなかったわけはないでしょう。どうしてこの調査のことを知らせてくれなかったのか。ここに男女別を入れれば済むと思わなかったのか」と聞くと、「存在は知っていました。が、この調査を利用するという発想がありませんでした」との回答。

私は口にこそ出さなかったものの、心の中では「そんなわけないじゃん!」と絶句・・・。

どうしてこの人たちは私たちよりずっといい大学を出てはるかに回転のいい頭脳を持っているはずなのに、その明晰な頭を、物事を一緒によくしよう、どうしたら可能か、という方向ではなくて、こんな言い訳を繰り出すことに使ってるのか、もうこの目の前の人たちと分かり合えることなどないのではないか、、とプチプチと頭の血管が切れている音が。

夫はこのことのため、文科委員会を希望して所属。このことを個別にやってきた夫が文科委員会に所属すること自体が、文科省の苦しい答弁が議事録にも残るんですよ、ましてそれを大臣にも言わせるつもりですか?という脅しのようなもの。結果、質問を繰り返して、隣の課の調査のことも大臣に知らせ、前向きな答弁も引き出すことができ、それを引き合いにさらに文科省との個別のやりとりをして、足掛け2年ほどかかり、ようやく男女別の合格率を公開させることが叶いました。

集団訴訟等をやっている弁護士や支援者の方を除けば、報道や議員も、この件を後追いしてしつこく追及し続ける人はほどんどいませんでした。でも、こういう個別案件の解決は、しつこく食い下がってその後の状況に目配りして担当部局をせっついていかなければ叶わないものです。日本は慣性の法則に逆らうのに大きなエネルギーが必要です。

この件質問で取り上げました、という方はいても、「許せない」と集会に出て叫ぶ人はいても、これだけしつこくこの件を突き詰めてやり続けた人は国会の中に他にいなかったと思います。それだけに、この案件は目立たないけれども夫の仕事の大きな結実です。

この手のことをするには事務所全体での相当な労力が必要で、とてもたくさんのことを一度にはできません。今回、解決の鍵となった別の課での大学別合格率集計を見つけたのも、お互いの事務所スタッフの念入りで継続的な調べがあったからこそ。硬軟織り交ぜてしつこく食い下がった執念によってなせた技だと感じます。

私にできたのは「この人は参議院だから解散もなくてあと4年いるから、この場をやり過ごしても4年間面倒は続きますよ」という夫の脅し文句のために使える存在価値があったというくらいのもので、あとは無駄に怒って血圧を上げ、たまに小さくでる報道などの情報収集をして共有していたぐらい。

ただ、今回のやりとりを通じて、永田町ではなかなかここまで手のひらを全部広げて内側からやり方を見せてもらえることなど少ない問題解決の一部始終をつぶさに学ぶことができたと感じています。

これでしばらく不正をして男子を多く取ろうとする大学は出てきづらいはずです。

その証左として、女性の合格率の方が高くなりました。

不正をしたら、おかしな数字が出て発覚し、合理的に説明せよと言われて、説明がつかないと大学側は助成金を減らされるという、一連の監視・懲罰機能がやっと発効したからです。

それにしても、公平公正であるべき入試で男女差別してはダメ、という当たり前のことを徹底するだけなのに、こんなに労力がかかるジェンダーギャップ120位の国、日本。

図らずも男女平等のための長い列に連なった一人として、これからも地道な努力を続けたいと思います。

補足:勢いに任せて書きましたが、当然ながら役所の皆さんは基本的にとても真面目で、この国をなんとかしたいと思って役所に入ってきていて、「自分の子供に障がいがあるので、就学時検診の時、学校や行政にはこうして欲しかったな、という親目線でこの資料をまとめたんです」なんて、こちらが涙して共感する方との素敵な出会いも存在します

よろしければこちらもお読み頂けたらと思います。

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