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制服や体育着のリユース

2022.03.18 16:27

新年度に向け、わくわくしながら進学の準備を進めているご家庭も多いと思います。一方で、制服や鞄など揃えるものが多く、頭を抱えているご家庭もあるでしょう。

先日、魁新報で五城目町や由利本荘市などで学校の制服や体育着をリユースする活動が紹介されていました。

その一つ、五城目町で制服のリユースに取り組まれている拠点「おさがり広場」をお訪ねしました。

小林さんがこの取り組みを始めたきっかけは、誰かに使ってもらえないかと、コロナ禍の中、まだ綺麗な制服を一着託されたところからであったとのこと。

飲食店をやめた小林さんは、それまで地域の方に支えられてお店を続けて来ることができて、その収入で子どもたちを育てることができたのだから、これからは地域に恩返しがしたいと思っていた矢先のことであったと言います。

コロナで保護者同士の繋がりも作られず、これまでであれば知り合い同士でやり取りしていたであろう制服や体育着などの譲り合いを中継する場所となれたらと思われたとのことです。

役立てるのならと始めることを決め、必要な15枚ほどの書類を行政に提出するために、民生委員の仲間など周囲を巻き込み、パソコンを使える若い世代をも巻き込んで準備をしていったそうです。五城目町のみではなく、多くの子どもたちが町内から通っている秋田市や能代市の高校の制服も届けられるようになり、実際にニーズもあるとのこと。

自宅の一角の元飲食店であったそのスペースには、ところ狭しと制服や体育着、ランドセル、柔道着、小学生のスキー用の上下やスポーツ用衣類などが並んでいました。

制服や体育着、鞄、コートなど、学校によって異なりますが、中学校以降は、各家庭で学校指定品を揃えるとされているものは多くあります。

私の経験を少しお話しします。

中学校3年の5月に親の仕事の都合で転校した私に、両親は新しい学校の制服、学校指定の鞄や内履き、体育着などを一式揃えてくれました。

前に通っていた学校はブレザーでしたから、初めて着るセーラー服に子どもらしい憧れもあって、とても嬉しかったのを覚えています。ただ、残り一年も使わない学校指定品に、両親は5万円ほどの費用を一気に支払うことになったのでした。しかも、学年ごとにカラーが指定されていて、お下がりをすることも容易ではありません。

入学時に制服を購入したとしても、成長期ですから、買い替えが必要になることもあります。毎日着るシャツや夏服、体育着は複数もっていると安心です。こうしたことの解決策として、制服などのリユースの活動が各地で広がっていることは大変心強いことで、行政としても、こうした取り組みの情報を各家庭に伝える努力をしていただきたいと思いますし、保管場所などに困っている団体には、ぜひ支援をお願いしたいと思います。

数年前、東京のとある公立小学校の制服が、アルマーニというデザイナーズブランドのものに変更されるとして、その是非や高額な費用が大きな話題となりました。ここから、制服にかかる費用が俄かに注目を集めるようになり、ユニクロなどが自宅で洗濯もできる安価な標準服を作ろうと動き出したことも報道されました。

各家庭の負担で購入されているものとなっている学校指定品。それらが本当に必要不可欠なものなのか、金額は妥当なのかが、この頃から大きく問われることとなりました。私立であれば、それをよしとしている人だけが集まるので許されることがあるとしても、特に中学校ではほぼ選択肢なく地域の公立に通う現状がある特に地方において、こうした負担が妥当なのかということは、常に問われるべきだと私自身は考えています。

欧米では、多くの公立学校に、学校備品として文房具や副教材が用意されています。

子どもたちはそれらが学校にあるので、自宅から持っていく必要もなく、保護者が学校から指定される細々としたそれらを揃える必要もありません。

日本でも、私のスタッフの子が通う新宿区の区立小学校では、算数セットなどは学校備品として備えられており、各家庭で購入して、数十個あるおはじきにまで一つひとつ名前シールを貼る必要も当然ないとのこと。そこには「子育ては大変なのだから家庭の負担を軽減しよう」という姿勢が感じられ、子育て世代としてはとても応援してもらっている気持ちになりますし、こうした準備が学校でなされていることは、家庭の経済力の差、子どものことにかけられるゆとりの差を見えづらくし、子どもが卑屈な気持ちにならずに済む大きな助けとなります。

絵の具セット、彫刻刀セット、ピアニカ(ただしマウスピース部分は持参)なども、学校に備え付けられ、一人ずつ自分ものを用意する必要をなくしている学校もあります。義務教育は無償と言いながら、こうしたものを保護者が買い揃え、そのほかにも必要なものの費用として毎月数千円を支払っているのが普通になっているのですから、年収ベースで20年前より100万円から184万円収入が減っているとされる子育て世代の負担感はとても大きなものです。

おしゃれをしたい年齢の子ども達のことを考えれば、制服のほうが結果的にはお金がかからずありがたいという保護者の声もあることと思います。

それぞれの地域で、子どもたちや保護者の声が聞かれ、見直しが行われることを望むとともに、政府が進めようとしている、GDPに占める子ども関係支出を倍増させる取り組みをしっかりと後押しして、子育て家庭や学校の先生たちの負担を軽減することができるように努力をすると共に、環境負荷の軽減にもつながる各地のリユースの試みを私も応援していきたいと思います。

写真は小林さんたちと「おさがり広場」にて


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