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女性から見える地平

2021.06.06 15:10

私が初めて性犯罪の類のものに遭ったのは、15歳の時でした。
長女でどちらかといえば幼く、弟の友達と外で遊ぶことも多かった私は、当時、自分が性的対象としてみられる、などということを全く想像もしていませんでした。
田舎で育ち、お山の猿くらいの素朴な私の平和を壊したのは、本屋ですれ違った一人の大人の男性です。
驚いたけれど、何をされたかということを悟った私はその人を全力で追いかけましたが、残念ながらあちらも全力で逃げていき、追いつくことはできませんでした。

私は知っています。
私のように追いかけたり、叫んだりできる女性ばかりではないことを。

大学生になり、一緒に歩いていた友人が痴漢にあった時は、彼女は絶句して動くことも声を発することもできず、私が叫んで全力で追いかけました。助けも求めましたが、商店街の中、自転車の犯人は逃げていきました。

バイト帰りの夜道、自転車で信号待ちをしていたときに、通りすがりの男性に突き飛ばされ、自転車ごと転倒する。

空いている電車内なのに、なぜか隣にぴったりと座ってくる男性がいて、席を変えてもついてくる。

窓を開け、網戸だけで昼寝をしていた夏、塀を越えなければならないアパートの敷地内に入り込んだ男性が、窓越しに覗いていた。

アパートの集合ポストにアダルトビデオや女性ものの下着が投げ込まれ、放置していたら、だんだんドアの新聞受けに入れられるようになり、不安で一人でその部屋に住んでいられなくなったー。

私や、私の友人が経験したことだけでも、挙げればキリがありません。
少なくとも、私の周りでは、こうした被害に一度も遭ったことがないという女性のほうが少数派です。

こうしたことを繰り返して、女性は、一人で歩く時は無意識に周囲の様子に気をつけるようになります。
自分が弱者であり、狙われうる存在であるということを、残念ながら学んでいきます。

女性であるというだけで、その地平には、男性とは別の景色が広がっているのです。

大人になれば、こうしたことを経験し、見聞きし、気をつけるようになっていきます。
アパートであれば2階以上を選んだり、日常の中で被害に逢うようなシチュエーションを避けるようになっていきます。

でも、15歳はどうでしょうか?
少なくとも、私自身が15歳だったとき、そうした準備は何も出来ていなかったと感じます。

日本の性交同意年齢、セックスに同意できるとされる年齢は、13歳と定められています。
これは、110年前、明治時代に定められ、一度も見直しがされていません。当時、13歳と定められた理由は、初潮年齢であること、妊娠が可能になること、吉原など遊郭との関係で定める必要があったこと等、諸説あるとのこと。どれも、女性の心情や感覚、尊厳などは全く尊重されていない理由ばかりです。

110年見直しすらされてこなかった13歳という同意年齢を見直すことに、今更理由の説明など必要なのでしょうか。

現代の私たちの感覚に沿って、子ども達の親である私たちの常識的なものの見方で見直す必要があると考えます。

1度でも性行為があれば、そこに妊娠の可能性が生まれます。
例え避妊したとしても、今日本で一般的に用いられている避妊方法では1割以上で失敗の確率があります。今の日本で、13歳で妊娠していいと考える大人はどう考えてもいないと感じます。
それは15歳でも変わらないと思います。

未成熟な同年代同士の性行為は、好ましくないとしても、罰するほどのことではないでしょう。
しかし、成人と中学生の関係は全くの別問題です。
14歳と成人との間に真摯な恋愛が存在するとして、性交同意年齢の引き上げに反対を唱える人たちがいます。
百歩譲って、そのようなものが存在するとしても、本当にその子を愛し大切に考えているのだとしたら、それなりの年齢になるまで性行為はしない、というのが分別のある大人の行動ではないでしょうか。

愛していれば、相手が中学生でもそういう行為に至るのは自然なことだと考えるのは、明らかに男性側のものの考え方です。
妊娠・出産という心身に負担のかかる責任を負わされている女性は、そのほとんどが「好き」すなわち「性行為をしたい」ということがイコールにはなりません。ましてや、中学生であれば無関係でしょう。
もしそこに性行為が行われるとすれば、男性側から幾度となく求められ、嫌われたくないという想いからくる同意や、単純な好奇心や経験欲、あるいは、様々な理由で愛情やぬくもりに飢えている場合であると考えます。そしてそれらのせいで、つけ込まれたり、判断を誤ることがあることは、容易に想像がつきます。
家庭環境に恵まれず、自己肯定感を長きにわたって削られてきた幼い子どもに対し、恋愛という関係に見せかけ多くの子どもの性を搾取する事件は多発しており、被害にあっていることも気づくこともできず、大人になってからその被害に気づき長く心身を病むというケースは残念ながら多くあります。

女性は、圧倒的な力の差から、無意識下でも常に男性から脅かされている存在であり、一対一の状態で、男性に対し自由に断れるということはまずないという前提を、立法に携わる男性には十分に理解してほしいと思います。

また、性教育は「妊娠に至る過程は取り扱わないものとする」との歯止め規定の影響で十分なものではなく、中学生はどうしたら妊娠に至るかという知識すら授けられておりません。
知識と判断能力という武器も与えられず、丸裸の状態のまま、被害にあった時だけ大人扱いされるのは余りにも理不尽過ぎます。

日本の性交同意年齢が13歳であることを伝えると、大抵の海外の友人たちは絶句します。

もはや先進国で、同意年齢を13歳としているのは日本だけだからです。
「恋愛関係ならば許される」と中学生と成人の性行為を許容していることが、幼い少女たちを搾取する大人の存在を許し、合意していないのならなぜ必死で抵抗しなかったのかと問い詰めて2重3重に傷つけ、国際社会からも白い目で見られていることを日本の大人たちは恥じて改正のための声をあげるべきです。

One is too many
「性犯罪被害者は一人でも多すぎる」
女性の地平から見える景色にたって、そして被害に遭う子ども達をなくすために、同意年齢を引き上げることが、今、なんとしても求められています。

写真は中学生だったころのもの。

参考になる記事を添付しておきます。
「13歳」のYES、それは本物? (NHK WEB特集)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200629/k10012487511000.html


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