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救われた命の行き先を

2021.07.07 16:49

「虐待死が出れば児相(児童相談所)をバッシングするが、児相が救ってきた命もたくさんある。
 その救われた命の行き先に、もっと関心をもってほしい。救われた命はこれからどう育っていくのかを」

これは、FNNドキュメンタリー「ママにしてくれてありがとう」に出てくる里親さんの言葉。
その里親さんは、これまで17人の子ども達を育てました。多くの子ども達の里親となった最初のきっかけは、実子に恵まれなかったこと。

実は、そのようなケースは少なくなく、獨協医科大学埼玉医療センターの杉本公平先生が埼玉県の里親家庭に行ったアンケートによれば、里親、養子縁組をした女性の約7割が、不妊治療を経験していたそうです。

このアンケートでは「里親や養子縁組の情報をいつ知りたかったか」という問に対して、多くの方が「不妊治療を始める前」と回答していたとのこと。
杉本先生は、その他の回答結果も踏まえ、不妊治療機関にて検査などもろもろの説明をする早い段階で、パッケージとして里親や養子縁組の制度についての説明をすることがとても大切であると結論づけられています。

検査や治療に進んでからでは、それこそデリケートになりすぎてそうした話を聞くのは苦しい。でも、検査に進む前の段階で、子どもを授かる別の方法について頭の片隅にでも入っていることは、カップルがこれからの人生を考える上で一つの選択肢になりうるものと考えます。
我が家もまた、結婚から4年、子どもを望みながら授からずにいました。当時、一通りの検査を受け、不妊治療に進むかどうか、やるとしたらどこまでどの不妊治療を受けるのか、養子はどうか等、夫婦で話し合いました。
結局、その後諦めていた頃に実子を授かることになったのですが、当時の経験から、不妊治療を受ける段階で、里親や養子縁組の情報提供があってもいいのではないかと漠然と思い、厚労省にそのことを求めてきた経緯もあって、杉本先生のお話はすとんと胸に落ちました。

「不妊治療を提供する医療機関でぜひ里親や養子縁組についての情報提供を」と直接厚労省に働きかけた当初は「なかなかデリケートな問題なので・・・」と煮え切らない反応でした。
それでも諦めず要請を重ねたところ、先日ようやく「不妊治療施設での里親・養子縁組制度の情報提供をすることが望ましい」との指針が盛り込まれました。

厚労省の指針では、医療機関での情報提供は未だ「望ましい」との表現にとどまっています。ポスターやパンフレットで制度を周知する案内を用意することなどは、どこの医療機関でもすぐに可能なことであると思います。
さらに踏み込んで、里親や養子縁組について説明できるように病院が用意しておくことは確かに大変かもしれません。ですが、不妊治療でも授かることが難しい方達のため、そして家庭に恵まれない子ども達のために、生殖医療と福祉が連携できるよう支援していきたいと思います。

「親元で暮らすことができない子ども達が少しでも早く家庭の中で育つことができるように」。
そのような今まで抱いてきた子ども達への想いと共に、「ママにしてくれてありがとう」と喜びを語る方の想いを併せて、これからも多くの方のお知恵を借りながら努力をしていきたいと思います。

写真は田沢湖にて。赤ちゃんだった頃の息子と


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