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子育て中の女性が稼げないのは女性のせいなのか

2023.01.31 17:22

「子育てや配偶者転勤でいったん離職した優秀な女性が信じられない低賃金で働いている。税控除目的ではなく、労働市場がおかしいのと、雇用主が買い叩いているから。非正規公務員も多い。彼女たちに必要なのはスキルアップではなく、まともな雇用主」
東京工業大学准教授の治部れんげ氏の発言です。

与党議員から「産休、育休中のリスキリング、学位の取得のサポート」との提案がなされたことに、子育ての実態を知らないとの大きな批判が沸き起こりました。私も同じ気持ちを抱きましたが、同時に強い違和感を抱いたことは、それらの提案の背景に、子育て中の女性が稼げない理由を女性個人に帰している発想が透けて見えたからです。
子育て中の女性が人並みに稼げる仕事に就くことができないのは、彼女たちが悪い(スキルがない)からではなくて、妊娠を告げたら退職勧奨をされる、「子どもがいる人は使いづらい」として正規の職にほとんど就けない社会のあり方、労働慣行にこそ問題があるからなのに・・・と、怒りを覚えました。

子育てで職を離れた友人の多くは、再就職に苦労しています。
加えて、このコロナ禍で見聞きした多くのケース。DVなどで離婚をするかどうか、女性が決断するときの決め手が、ほとんどの場合、物心共に頼れる実家があるかどうかになっているという、語ることすら憚られる現実があると感じています。子どもを抱えてそれなりに稼げる仕事に就くことが難しい現実。離婚が成立するまでの生活費、養育費を受け取れるまでの生活をどうするのか、明日からの住まいは?仕事を探すにもその間の子どもの面倒はどうする?
そうした金銭的な援助、育児支援、心の拠り所の一切合切を実家に頼れる女性でなければ、一歩を踏み出すことが難しい現実があるー。

子育て中の女性にあまりにも厳しい日本の社会が、立ちはだかっています。残業が当たり前の働き方、自分や家族が体調が悪ければ休むのは当たり前のお互い様とならない社会の理解の乏しさ、週5日8時間稼働できなければ「使えない」「能力がない」とみなされる、人を使い捨てにして、それが「効率がいい」ことだとしてきた社会のツケが、この異次元の少子化です。

彼女たちが稼げる仕事に就けないのは、彼女たちの責任ではなく、決定的に社会の子育て支援が足りないから、そして、小さな子どもがいても正規で雇う就職先がないからです。母子家庭の半数が貧困に陥る現状も、ここに原因があります。

ジャーナリストの浜田敬子氏が、政府与党の子育て政策に対して「どれだけ異次元の、とか大風呂敷を広げても、家族でなんとかしろと本音では思っている保守系の議員は多い。社会全体でと口では言いながら、そこが変わらないから、本質的で実効性のある対策が立ててこられなかったのだと思う」とおっしゃっていましたが、全くその通りだと思います。
そうだからこそ、産休・育休中の学び直しなどという迷言が出てくるのでしょう。

政府与党の進める「子ども真ん中政策」に子育て世代の一人として期待はしています。
同時に、「子育ては基本親がするもの。足らざるところを社会が補う」ではなく、「子育ては大変で親だけで背負えるものでは決してない。だから社会全体で支えていこう」という価値転換を政治が本気になって取り組み、社会の共通認識となって初めて、多くの人が子どもを産み育てたい、もう一人産んでもいいかなと思うことができる、追い詰められる前に誰かに相談することができる社会になると考えています。

今回、与党議員から「産休、育休中のリスキリング、学位の取得のサポート」との提案がなされ、大きな批判を招いたことで総理も説明に追われました。総理ご自身がどのような感覚をお持ちかは、いまだ伝わるところがありませんが、いま国会に集う子育てをしてこなかった人たちの提案や発言が、いつもこのように的外れで、子育て世代を、特に女性たちを幻滅させてきたことは事実です。
本当に異次元の少子化対策を実行していくということであれば、空想や理想、想像ではなく、いま子育て世代が置かれている実態をつぶさに見つめ、その苦悩に耳を傾け、障害となっているものを取り払い、本当に必要とされている施策を速やかに当事者に届けられるよう姿勢を改めて欲しい。
そのために、私自身も国会の中で頑張っていきたいと思います。


写真は、同時期に母になった友人達と。


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