ブログ

もし、母を助けてくれる人がいたら

2023.03.14 15:48

「もしあの時、うちの母を助けてくれる人がいたら、僕は自分の家で育つことができていたかもしれない」

議員となってから、様々な事情で親のもとで暮らせない子どもたちのために里親を増やしたいと取り組んでいますが、里親制度を広めるための研修会で、里子の立場から参加していた青年が語ったのが上記の言葉でした。

彼は幼い頃施設に保護された後、里親のもとで育ち、大人になった今でも里親さんといい関係性が築けています。「施設は僕の命を救ってくれた。里親は僕の夢と希望を育ててくれた」とも。その彼が発した「もし、母を助けてくれる人がいたら、、、」という言葉は、私の心にずっしりと残るものがありました。

様々な勉強会で子どもの虐待の背景を聞くと、親が精神疾患を抱えていたり、経済不安があり仕事を掛け持ちしていたり、親自身が虐待を受けて育っていたりと、親が問題を抱え、追い詰められていて、子どもが辛い立場に追いやられている事例が多くありました。もちろん、どんな状況であろうと子を虐待することは決して許されることではなく、その状況から子どもの命と安全を守るために避難させる体制はしっかりとあるべきです。ですが、親が適切なサポートを受けられていたら、子どもが虐待される状況は避けられたのではないか、親がサポートを受けながら実の家庭で育つ選択肢があればー。そんな思いが拭えませんでした。

そんな時に知ったのがフランスの「家庭支援」の考え方でした。

フランスでは、社会的養護において予防に力を入れており、子どもをケアするために親をケアするとのこと。妊娠時にソーシャルワーカーとの面談があり、そこから出産後、子どもが大人になるまで、親と子どもを見守る体制ができています。子どもは好ましくない環境で育つ時間が長いほど、リカバリーに時間がかかるので、予防的にケアして保護の必要がないようにすることはコスト削減にもつながるとの考えが制度の背景にあるとのことでした。

私にこの仕組みを教えてくださったのはフランス在住の安發明子(あわ・あきこ)さん。

安發さんは日本で生活保護担当のワーカーとして働いていた経験があります。持てるものが多い国なのに、困っている人に提供できるものが少ないことが悔しかったと言います。お金があれば治療が受けられるのに、病気のお母さんと子どもたちと暮らす家を訪問し、「元気になって働いてください」と言わなくてはならない福祉に絶望したと言います。

2011年に渡仏し、大学院に入り、児童保護施設に通い、学校や保健所の仕組み、フランスの福祉の全体像を掴むために様々な機関を訪れ、支援する側にもされる側にも会ってこられたとのこと。日本で出会った子どももこの制度があればもっと幸せに成長できたのにと、日本にフランスの福祉を伝えることをライフワークとされています。

そんな安發さんのお話で、妊娠期から生まれた直後、子どもが大人になるまで、家庭を支えるフランスの制度に日本が学ぶことが多いと感じました。

ケアされた子どもはケアを受けられなかった時より良い未来をつくることができるーーーこれは世界共通の真実だと思います。

子どもの置かれた環境は様々で決して平等ではありません。子ども一人ひとりに合った福祉と教育を用意し、保護者を支え、子どもがすくすくと育つことができる最善の環境が整えられるー。そんな社会のあり方を目指して私もいろんな方のお知恵を借りながら取り組んで参りたいと思います。

写真は、令和2年度全国里親制度研修講座にて。

****

現在、このフランスの家庭支援を詳しく紹介するフランスの漫画『ターラの夢見た家族生活』の日本語版を出版するためのクラウドファンディングが実施されています。精神疾患を抱えた母親のもとで育つ8歳の女の子、ターラを主人公に、支援の様子がわかりやすく描かれています。

正式名称「在宅教育支援」はフランスの家族をまるごと支える制度の一つで、支援が必要であると判断された子どもに対し、月5時間〜毎日1時間エデュケーターという資格を持った専門職が一緒に過ごし支援をする制度です。毎年未成年人口の約1%が利用し、平均約1年半で家庭内の状況が改善し終了するそうです。保健省の報告によると、状況が悪化し施設措置になることに比べたら9000分の1のコストで済むとのこと。日本には見られない制度なので、私もこの本を読んで日本に活かせるところがないか学びたいと思っています。

クラウドファンディングのサイトを下記にご紹介しております。日本語版が出版されるようご協力いただけましたら幸いです。

https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/6908


トップへ戻る